横断幕の話〜アスさんとのできごと

2012Mermaidsの個人幕は、東日本インカレで初めてはりました。



2012年。6月29日。
その年の東日本インカレは札幌で開催されました。
残念ながら、マーメイズの試合はサブアリーナで行われたため、せっかく作った個人幕はサブアリーナの壁にテープではるしかありませんでした。
土曜日はメインアリーナで試合ができたのですが、マーメイズは残念ながら金曜日に松蔭大学に敗れてしまいました。
サブアリーナから、メインアリーナに行ってみると、試合はまだ行われていました。
そこに「アス」がいました。
2012マーメイズ4年生のアスさんの幕も、勿論、作ってありました。
実は、アスさんが北海道出身ということも聞いていたので、アスさんのご家族にも見ていただきたいなという思いもありました。
北海道から関東の試合を見に来るのは大変でしょうから。
アスさんは、メインアリーナでデータ取りをしていたので、ご自分の幕もまだ見ていないのだろうと思いました。
せっかくだから、幕を見てもらおうかなと思ったのですが、ひとりぽつんといたアスさんに、言葉を掛けることができず、そのまま体育館を後にしました。



2012年。9月15日。
秋リーグ開幕。
この日、個人幕をはっていたら、アスさんがやってきました。
「楽しみにしていました」
「北海道じゃ、見れなかったもんな」
「そうなんですよ」
目をキラキラさせながら幕を見て、
「親も楽しみにしてたんです」




2012年10月13日。
秋リーグ最終日前日。

4年生にとって最後のリーグ戦であるのに、

アスさんが会場にいませんでした。

どうしたのだろうと心配に思っていたら、
ある方から、アスさんのお母さんが亡くなったことを聞きました。
いろいろなことを思いました。
なかでも、
「親も楽しみにしているんです」
の言葉の「深さ」「重さ」が、こたえました。


東日本インカレで、なぜ、アスさんに声をかけれなかったのか。
アスさんのお母さんは、北海道開催の東日本インカレで、幕を見ることができたのだろうか。
多くは自分を責めることばかりでした。
アスさんのいない2012年の秋リーグ最終日は、
私にとって、それまで以上に「特別な日」となりました。



2012年12月17日。
皇后杯PFUに敗れ、2012マーメイズの全ての試合が終わりました。
試合後、幕を4年生に渡しました。
コートの反対側に4年生がいました。アスさんを見てました。
幕を広げて、それをじっと見つめていました。
それから、大事そうに。愛おしそうに。幕を丁寧にたたみました。
個人幕は、できるだけ続けたいと、その日、強く思いました。