対トヨタ車体

第5セット
アローズ 16−14
勝ちました


ダンさんの笑顔と青い波と涙

試合が終わり,選手達を見送って。
今日,ご挨拶できたアローズファンの方と少しお話をしたあとにタクシー乗り場に向かいました。
そこにお二人のご婦人とその娘さんらしき方がいらっしゃいました。
試合が終了して,かなりの時間が経過していて,タクシー乗り場にはその3人と,僕ともう一人の東レアローズファンの5人だけでした。
そのご婦人達はダンさんのファンであるらしくダンさんのお話をされていました。

「やっぱり最後はダンさんが決めてくれたね」

今日の試合はけっしてほめられるような内容でなかったかもしれません。
だけど,今日の試合。全ての東レアローズファンに見せてあげたかった。
私達が東レアローズに,バレーボールに心揺さぶられるその理由を。
今日の試合は言葉ではなくて,試合で示してくれたように思います。
一人ひとりが輝いていた今日の試合で,自分が特に心に深く残ったのが向井久子選手。
東レアローズキャプテンのダンさん,背番号1でした。

ダンさんが途中出場した第4セット。その時,東レアローズは大量リードされていました。
もしかしたら,そのセットは諦めて第5セットに勝負をかけるという作戦もあったかもしれません。
でも,ダンさんは,東レアローズはけして諦めない集団でした。

ダンさんはいつものようにコートに入る瞬間「笑顔」でした。
セットを取るには苦しい場面での出場。それでも,ダンさんは笑顔でした。
「大丈夫だよ」
ダンさんは笑顔でみんなを支えてくれていました。
その第4セット。少しずつ,少しずつ東レアローズは得点を重ね反撃します。
もしかしたら。
そう思わせるような反撃。
「大丈夫だよ」
ダンさんがコートの中で思い切り弾けていました。
でも,そのセットは結局届きませんでした。
流れの中で,第5セットはダンさんが先発かな?と思いましたが,控えから第5セットが始まりました。
アローズの出足は好調で8−4でコートチェンジ。
そこから苦しい展開になり同点にまで追いつかれて。
ジュースになっての苦しい場面。
ダンさんがコートに立ちました。
その時も やっぱり「笑顔」でした。
15−14。
トヨタ車体の攻撃をしのいで東レアローズがチャンスをものにできず,ラリーが続く中でダンさんに上がったボールはけして,きれいでも簡単に打てるようなボールではなかったように思います。でも,みんなが必死につないだボールに向かって飛ぶダンさん。対するは,この試合で猛威を振るったトヨタ車体のブロック。
体ごと持って行ったようなダンさんのスパイクが,ブロックを破りトヨタ車体コートを駆け抜けていったその時に。
スタンドに青い波が生まれました。
メガホンを持った人たちが嬉しさに椅子から立ち上がって出来た青い波でした。

帰りの新幹線で,お弁当を食べようとして,今日の試合を思い出して不覚にも涙がこぼれてしまいました。
試合を決めたあのスパイクも素晴らしかったけれど,大差が開いた中で,みんなを盛り立てあきらめずに戦っていたダンさんの姿が心にふかくしみました。
新幹線で一人でお弁当食べながら泣いてる変なおじさんになってしまいました。

最後に偶然タクシー乗り場で出会わせたアローズファンのご婦人達の言葉が浮かびました。
「やっぱり最後はダンさんが決めてくれたね」