開幕はスタメンスタートだった。けれど,なかなかチームは勝利をすることが出来なくて。
スタメンから外れても,コーナーで審判に時に注意されるぐらい前に出て,声でチームを励まして。ゲキを飛ばして。
大きな点差を開けられた浜松の試合でも,その人はゲームを捨てることなく,少しずつ少しずつゲームを,チームを立て直していった。
けして絶好調ではなかった。
それでも,その人は闘志を心に。チームを鼓舞する声は,コートの中で絶えることはなかった。苦しい時の顔はいつも笑顔だった。
勝利に届いた試合も届かなかった試合でも,いつも同じだった。
渾身のスパイクをブロックでシャットされたことがあった。
自分自身を叱咤した。
チームメイトがミスをした。笑顔で,大丈夫だよと微笑んだ。
川越,そして東美濃
2セットを先取された苦しい試合だった。
チームを奮い立たせた。
必死に粘った。一球たりとも疎かにしなかった。諦めなかった。
コートの中で,その人は,ひときわ輝いていた。
それでも勝利には結びつかなかった。
試合後にスタンドに挨拶に来た時,
ちょっと涙が浮かんではいたけれど,
口を真一文字に結んでいたけれど,凛と立ってエールを聞いていた。
心は笑顔でいようとしているのが伝わった。
人はつらい時,苦しい時,上手く行かない時にこそ,その「人」が出ると思う。
夕陽の中,ダンさんは笑顔だった。