Aさんの個人幕

今、忙しくて。疲れて、お風呂入っていて、おぼれてしまったこと数回。
そして。
少し時間が経過したから、書く。



東海の4年生の個人幕を作成していて、東日本インカレで個人幕を披露するようにしています。
時間的に、それが最速であるから。


その年の東日本インカレは、北海道で行われました。
東海はサブアリーナで試合。
せっかく個人幕を作ったけれど、残念ながら張るスペースはなくて、壁に養生テープで張りました。


試合は松蔭大学に敗れて敗退。
個人幕を外して、メインアリーナに行きました。
すると、メインアリーナでデータを取っていた4年生のAさんを見つけました。
ああ。Aさんは、データを取っていたから、個人幕を見れていないんだ。
北海道が故郷のAさん。
Aさんに、幕をお見せしようか迷ったのですが、敗れてしまった今、なんと声を掛けてよいかもわからず、その場を後にしました。


秋リーグ。
開幕の日体大の体育館に幕を張りました。
すると、Aさんが幕を見に来ました。
「見たかったんですよ」
そう言ってくれました。
「北海道では、見れなかったんだよね」
そんなお話をしました。
すると、Aさんが
「親も楽しみにしているんです」
そう言いました。




秋リーグ最終週。
1本のメールが届きました。
それは、Aさんのお母さんが亡くなったことを教えてくれるメールでした。


言葉になりませんでした。


それ以来、Aさんの
「親も楽しみにしているんです」
その言葉が、ずんと心に「今でも」残っています。


急なお別れだったのか、それとも、長く病気と向き合わられてきたのか。
わかりませんが、卒業間近、
秋リーグ最終週の、この悲しい出来事に、Aさんもお母さんの気持ちも考えると、安易な言葉では表見できません。
「親も楽しみにしているんです」
あの言葉の深みは、思うだけで切ない。
その日の東海は、その1年で最も強かったです。



北海道で、1日だけ幕を張ったのだけれども、お母さんが見ていてくれたら。
それだけは淡い願いを、今も持っています。



その年、最後の試合。
皇后杯。東海はPFUに敗れました。
試合後、4年生に個人幕を渡しました。


ちょうど席の反対側に4年生がいたので、見ていました。
すると、Aさんは個人幕を広げて、それを長い間、ずっと見つめていました。
丁寧に幕をたたみ、しまいました。


個人幕は、私ができる力のある限りは、ずっと続けたいと思います。