2020年 3月某日

春リーグを翌月に控えた3月某日。

桜の開花も間近なその日は穏やかで

風もなく

雲一つなくというわけではないけれど

申し分ないほどの青い空に白い雲が浮かんでいて

日向にいると少し汗ばむほどの温かな休日でした。

 

練習見学に行きました。

ですが、あいにくその日は夕方からの練習のようで静かな体育館でした。

穏やかな温かなその日。

ベンチに腰掛けて缶コーヒーを飲みながら、ぼんやりと待っていました。

もうすこし

私が若いころでしたら、けして待とうとは思わなかったと思います。

少し若い頃ならば

今の自分には時間がない。

待つなんてできないよ。

そう思っていたでしょう。


面白いもので

若いころと違い、それなりに年を重ねた今。

時間の観念からしたら、ずっと短くなってしまったはずなのに。

老いた自分の時間は

若いころよりもたくさんあるようになったものが幾つかあることを実感するようになりました。


日が傾き、少し肌寒い風が吹くのを感じるころになって

部員さんが次々と体育館に入っていくのを見ていました。

自転車に乗った2年生の某選手が

厳しい顔をしているのを見ました。

その時、

あ。

帰ろうと思いました。

5時間ぐらい待っていたのですが、

不思議と

「せっかく待ったのに」

そんな風にも思わず

開幕を楽しみにしよう。

自然とそう思い帰宅いたしました。

見学に行き、練習があるのに練習を見ずに帰ったのは、初めてのことだと思います。

 

その翌週。

春リーグが延期されると発表されました。

その後、ご存知のように春リーグは中止。


この1年、1度も試合を体育館で見ることはできませんでした。

不思議ですが、

2020年3月某日。練習を見ずに帰宅したことを残念だったとか、あの日、見て帰ればよかったなとかは、考えませんでした。

うまく言葉にしづらいのですが、自分がどうこうではなくて、

あの日は、あれが最良だったと思うからです。

多分。

あの時、未来がわかっていたとしても、あの時はあの選択をしていたと思います。